ロールキャベツは好きですか?
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side:祈梨
差し込む日差しを感じて、瞳を押し上げた。
その瞼の軽さから、久しぶりにゆっくり寝た気がする、と思った。
白い天井を見つめる。昨日家までたどり着いた記憶がない。
……でもここは、私の家。
「……ん?」
そこで私は手首を包まれる温もりに気がついた。
私の右手首を、私よりも一回り大きな手のひらが包んでくれていた。
その手のひらを追って、視線を上に上に持ち上げると、うっすらと目を開けた、田島くんが……いた。
「た、田島くん……!?」
私の目覚めを確認すると、田島くんはあの細い瞳を一層細めて、
「おはようございます。主任」
爽やかな挨拶をしてきた。
「お、お、おはよう」
田島くんがなぜ、ここに……!?
一緒に帰ったんだっけ?
頭が混乱する。
きっとアシストの佐藤さんが退職すると言ったときよりパニックになっている。
「気分はどうですか?」
「気分……」
「覚えてませんか?熱で倒れたんですよ、主任」
「熱」
そういえば額に違和感がある。
左手で触れると、冷えピタが貼られているらしいことがわかった。
「会社で倒れて、俺しか周りにいなかったから、タクシーで帰ったんです。勝手に主任の鍵で入ってしまいました」
「……もしかして、一晩中看病してくれてたの?」
「そのつもりはなかったんですけど、やけに主任が心細そうだったから」
苦笑するように笑って、田島くんは繋いだ右手を私の顔の前で振ってみせた。
……やば、めっちゃ恥ずかしい。
「色々とごめんなさい。ゆっくり寝れてないでしょ?田島くん」
どうやら、ベッド横の床に座って、私の顔の横に頭を乗せて寝ていたらしい。
「俺は平気です。主任は?顔色はだいぶマシそうですけど」
「しんどくはない」
「だったらよかった。食欲は?お粥でも作りますよ」