ロールキャベツは好きですか?

「遅くまで残業するからです。昨日俺も残ってて、よかった」

「ホント、ごめんなさい」

私の謝罪を背中で受け止めながら、田島くんはカチャカチャと雑炊に流し込む卵をかき混ぜていた。

「田島くん、手慣れてるね。私なんかと大違い」

「大学時代、居酒屋で少しバイトしてましたから。簡単な料理なら作れますよ」

すごい。そんなこと言ってみたい。

私の祖母も母も、料理や手芸はとても上手いのに、私にその遺伝は受け継がれなかった。

何せ手先が不器用なのだ。

卵焼きはスクランブルエッグになるし、ハンバーグはひき肉炒めに早変わり。

大学時代は化学専攻だったけれど、実験は私泣かせだ。
細かい作業は必然の化学実験。
いつもいつも、やれ試薬を入れすぎたやら、危険な試薬を手にかけたやら、教授を慌てさせた。

そんな私が、研究を主な仕事とする商品開発部ではなく、営業部に配属されたのは、当然の人事配置だと思う。

< 63 / 210 >

この作品をシェア

pagetop