ロールキャベツは好きですか?

「さ、これで、じいちゃんが戻ってきたら、一見落着なんだけど……」

私は散歩に出たまま帰ってこない祖父を思って、外に出た。

この近くにいないかなぁ。
それとも法事終る頃まで帰ってこない気かなぁ。

祖父母の家の小さな庭を通り抜け、門を出たところ。

「あれ?じいちゃんだ」

門を出てすぐのところで、祖父は誰かと話し込んでいた。

目の前にある長屋のそばで立っている。

この長屋は祖父の持ち家で、今は一人暮らしの人向けに貸しており、祖父は家賃をいただき、生活費の足しにしている。

祖父と話し込んでいるのは、その長屋の住人だろうか。

あんまり祖父母の家に足を運んでいなかったから、最近、どんな人が暮らしているのか知らない。

「あ、じいちゃんいるじゃん」

後ろから私を追いかけて外に出てきた洋平の、そのよく通る声に反応して、祖父は振り返った。

必然的に、祖父と話し込んでいた人も、こちらを注目する。

それぞれの距離は3メートル。

そして、私も向こうも驚きに固まった。
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