ロールキャベツは好きですか?
「田島さんは、ここの長屋の住人。去年の冬頃に越してきたっけ?」
洋平の言葉に辛うじて田島くんはコクコク頷いている。
予想通り、田島くんは祖父の長屋の住人だった。
驚きだ。確かに最寄り駅は同じと聞いていたけれど、家の場所までは知らなかった。
「世間って狭い……」
ボソッと声を出した田島くんに苦笑しながら、同意する。
会社の部下が、弟や祖父と、私の知らないうちに仲良くなっていたとは思わなかった。
「大家さんのお孫さんの話、よく聞いていたけど、まさか、渡邊主任のことだとは思いませんでした」
それもそうだ。
渡邊という名字は父方の名前であり、祖父は母の親だから名字が違うのだ。
気づけという方が無理だ。
「もしかして、去年、主任のお祖母さまやお母さまのお葬式に会社の人間として出席したけど……そのお二人って大家さんの奥さんと娘さんだったんですか?」
そういえば、去年のお葬式に、田島くんは出席してくれていた。
「そっか。田島さん、出席してくれていたんですね。ありがとうございます。今日は二人の一周忌なんです」
洋平がペコリと頭を下げる。
田島くんが引っ越してきたのは冬頃と言っていた。
今は10月。去年の今頃はまだここには越してきていなかったから、私と大家である祖父の関係を知らなかったのだろう。