ロールキャベツは好きですか?

「お葬式からもう1年になるんですね。そっか、主任が胃潰瘍になってから1年か」

「……その節はご迷惑をお掛けしました」

ペコリと頭を下げた。
胃潰瘍は仕事とプライベートで溜まった疲れとストレスが原因と診断されて、手術するほどでもなかったが、休息を取るように言われた。

残業はドクターストップがかかってしまったため、仕事の大半を田島くんが肩代わりしてくれたのだ。

「なんか、主任、こないだから謝ってばかりですね」

田島くんが苦笑する。

確かに昨日から謝ってばかりだ。
自分が体調を崩すたびに、田島くんに迷惑をかけている気がする。

「あ。そういえば、熱下がったんですか?下がったから、外に出てるんですよね?」

田島くんの言葉に、祖父が目を剥いた。

「祈梨。熱があるのか?」

「昨日は熱で寝込んでたのよ。誰かさんが法事に出たくないとか言い出すから!」

恨みをこめた目を祖父に向ける。

ここ数日、仕事の忙しさもあったが、祖父と叔父の説得もしていた。
駄々っ子二人に、イライラし、疲れて、きっと、熱を出したのだ。

「姉ちゃんが熱で倒れたって言うのは聞いてたけど、田島さんもご存知でしたか」

「まぁ、俺の目の前で倒れましたしね」

田島くんの正直な言葉にいたたまれなくなる。自己管理がなっていなかったことが、とても恥ずかしい。

「重ね重ね……すみません。熱は無事下がりました」

心配と迷惑をかけたことに、申し訳なくて、部下相手に、敬語になる私。

「祈梨。気をつけろよ」

元凶である祖父が呑気だから、思わず言った。

「熱ぶり返したくないんで、今日の法事は出てくださいね!じいちゃん。智叔父さんも出るから」

すると祖父は途端に嫌そうな顔をする。
< 78 / 210 >

この作品をシェア

pagetop