ロールキャベツは好きですか?
何とも我儘で、頑固で、腹立つ人だ。
じいちゃん……。
こんな祖父に手を焼きながらも、敬い、愛していた祖母は、なんて寛大な人だったんだろう。
「お義姉さん。そろそろ時間ですよ?おじいさん、見つかりました?」
「ねぇね!」
明るい2つの声に、眉間に皺がよりかけていた私の顔が緩んだ。
玄関から杏を抱っこした真ちゃんが出てくる。
私の隣に真ちゃんが立つと、杏が顔を緩めた。
「じいじ!あーぼ!」
大好きな祖父を見つけたからだ。
杏の今の言葉は、『ひいじいちゃん!遊びましょ♪』らしい。
「じいちゃん。愛するひ孫が呼んでるよ」
洋平の声に祖父は迷いを見せ始める。
「しょーくん!!」
杏の聞き慣れないその言葉に、田島くんが満面の笑みを浮かべた。
「杏ちゃん。久しぶりだね」
「田島くん。いつの間に、杏と仲良しになってるの!?」
「度々、大家さんの家に遊びに来られてるんでね。洋平さんご家族は。それで時々、会ってました」
「しょーくん!」
抱っこをせがんだ杏を、田島くんが軽々と抱き上げる。
「お義姉さん。田島さんとお知り合いだったんですか?」
「真。驚くな。田島さんは、姉ちゃんとおんなじ会社だったんだ」
洋平が楽しそうに、真ちゃんに教えている。
「そうなんですか!?」
「渡邊主任には、毎日お世話になっております」
杏を抱いたまま、ペコリと頭を下げた田島くん。
「しょーくん!!」
「杏ちゃん可愛いね」
ヨシヨシと頭を撫でてやる田島くんのその目つきが、とても和んでいて、なぜか、胸がギュとしめつけられた。
彼は独身のはずなのに、杏を抱き上げると、お父さんみたいだ。
田島くんなら、いいパパになりそう。
そんな風に思ったら、何だか哀しくなった。
「田島くん。子供好きなんだね」
「はい。めちゃくちゃ好きですよ?」
微笑んだ彼に、私も微笑み返す。
けど、胸が痛くて、ちゃんと笑えていたのか、わからない。