ロールキャベツは好きですか?

主任って、謎だ。

「ただいま戻りましたー!」

声をかけて会社のフロアに入ると、所々から声が返ってくる。

「お疲れ様でーす」

自分のデスクに戻ると、隣の主任のデスクには、主任と来客がひとり。

松谷課長だ。

ムッとする俺。
いくら仕事の話だろうと、主任が元恋人と話をしているのは、面白くない。

「お疲れ様です」

「あ、田島くん。お帰り。お疲れ様です」

一応声をかけて、デスクに座ると、主任から声が返ってきた。

外回りの鞄から、書類やら何やらを取り出す。
隣に立つ松谷課長を気にしないようにしながら俺はパソコンを起動させる。

主任は高速スピードでタイピングしている。

「松谷課長。仕事の邪魔ですから、用事が終わったなら、自分のデスクにお戻りください」

自分の元恋人に、邪魔って。

そりゃあ、松谷課長と主任の仲を疑うひとが、一人もいなかったはずだよな。

「つれないなぁ。渡邊主任は」

「あと30分で外出しなくちゃいけないの。無駄話している暇ないのよ」

課長相手にシッシッと手で追い払えるのは、主任ぐらいなものなんだろうな。

「はいはい。帰りますよ。お前に成績抜かされたくないしね」

「あら、今期は一位を頂くわよ?もちろん」

生き生きしている主任。
ライバル意識を互いに持っている、松谷課長と主任は、いつも成績を競い合っている。

お互いに、微笑みを浮かべながら、火花を散らす姿は実に楽しそうだ。

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