ロールキャベツは好きですか?

「歓迎会は参加しろよ。渡邊。新入時代に指導してもらった大事な上司だから」

「言われなくてもそうします」

アッカンベーでもしそうな勢いで、言い放って、二人の会話は終了。

ようやく松谷課長は自分のデスクへと戻っていった。

タイピングを続けるその横顔を盗み見る。

主任を知りたくて。
主任が時々見せる表情の意味を知りたくて。

不意に主任が目線だけをこっちにやってくるから。
目が、合ってしまった。

「主任……」

盗み見がバレてしまって、俺は焦って、とりあえず笑ってみせる。
すると、主任は苦笑いをした。

「こそこそと見てんじゃないわよ」

「すみません」

バレてた。
俺が注意向けてたのバレてた。

怒られるか、と思ったら、彼女は思いの外、優しい声で問いかける。

「そんなに、新部長が気になった?それとも、私が課長と話してたことが気になった?」

後半の問いは小声でからかうような声だった。

「まぁ両方とも、少し気になりました、けど」

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