ロールキャベツは好きですか?

「なに?まだ何か気になることでも?」

いつまでも主任を見つめっぱなしだったから、彼女は怪訝そうな顔で首を傾げた。

「まぁ、ありますけど」

「あるんだ」

「訊いていいのかどうなのか……」

あまりに彼女の心に踏み込みすぎる気がして、俺が憚っていると、主任はやんわりと微笑んだ。

「言ってみなさいよ。気になって仕事集中できないんでしょ?」

「まぁ……」

「答えるかはぐらかすかは、私が判断する」

はぐらかされることもあるんだ、と思いながらも俺は意を決して、口を開けた。

「さっき、課長が新部長の名前を出したとき、主任の動きが止まったのは、何故ですか?」

主任が笑顔のまま、固まる。
一瞬瞳が揺らいで。
気づかれたことを恥じているみたいだ。

「主任?」

ああ、これははぐらかされるな。

主任は右手で自身の髪を耳にかけた。
形のいい耳が露わになる。
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