ロールキャベツは好きですか?
「もっと失恋で弱ってるのかなって思ったのに、主任がピンピンしてるのは、すごく意外でしたけど」
私は思わず自嘲気味に笑ってしまった。
「本当に無理してませんか?」
「してないって。ちゃんと整理ついてる」
しつこいほどに心配症の田島くん。
彼からしたら、3年も付き合った相手の浮気にショックを受けないほうが不思議なのかも。
「主任は失恋で泣いたことないんですか?」
自然と脚の動きが遅くなった彼より歩調を速めて、彼の背中を追い越した。
泣くほど悲しかった失恋。
永遠にかなわない片想い。
胸の奥がキリリと痛んで。
それを悟られたくなくて、私は彼の右斜め前を歩く。
「あるよ。悔しくて、歯がゆくて、泣いたことがある」
皮肉にも声が震えた。
敏感な彼はそれに気づいて、そっと私の隣に寄り添った。
いつの間にか、俯いていた私は、2つの影がそっと重なり合うのを見た。
彼が肩を抱き寄せたのだ。
「辛いことを思い出させてすみません」
「ごめん。何かセンチメンタルになっちゃった」
彼の腕の中で、今の空気を振り払おうと笑ってみせた。
そんな私を、痛々しく見つめながら、彼は、そっと口を開ける。
「……今も引きずってるんですね」
「もう。整理ついてるよ」
「うそだ。だったら今、どうしてそんなに泣きそうなんですか?」