素直になれない7センチ
「あんなに……好きだった人なんだから」
その言葉にズキリと胸が痛んだ。じわりじわりと痛みが浸透していき、耐えるように下唇を噛みしめる。
私があの日————逃げ出して彼を傷つけたんだ。
「ずっと会いたかった」
夏目くんが詰め寄るように一歩、私の元へ近づいてくる。
距離をとろうと右足を後ろにずらそうとすると、かかとが壁に当たった。
まずい……これ以上は下がれない。
私の困惑なんてお構いなしといった様子の真剣な表情の夏目くん。
「音信不通になっちゃうし、ゆたに聞いても本人が拒否してるからって言われちゃったし……」
「……ごめんなさい」
「もう俺、子どもじゃないから」
熱っぽい眼差しに頬が紅潮していくのを感じる。
どうして彼はこんなに真っすぐなんだろう。
もう何年も前の出来事なのに。