素直になれない7センチ
「イケメンってさ、人生イージーモードだよね」
————どうやら彼は社交性があるらしく、配属されて三日ですっかり溶け込んでいる。
周囲にも可愛がられているし、水井さんは完全に夏目くんをロックオン。
毎日懲りずに話しかけにいっているのが見える。
見ているのではなく、席的に見えてしまうだけ。ここ重要。
「……ねえ、真希。イケメンってさ、人生イージーモードだよね」
「あはは、まあ顔がいい方が確かに得はするだろうね〜」
リズミカルにキーボードに指を滑らせている真希が、パソコン画面を見つめたまま笑った。
私は視界の先の彼を見ないように、猫背になって画面に顔を隠す。
「でもまあ、イケメンも色々大変なんじゃない?」
「大変って?」
「一方的に猛アタックされること多そうだし」
「……ああ、まあ」
夏目くんを狙っているのは水井さんだけじゃない。
先日前の部署で親しかった人と女子会を開いたらしい真希。そこで話題になったのがイケメンホープの夏目くん。
しかも、違う階の部署の女性も狙っている人がいるとのことで、今社内ホットワードは “システム管理部のイケメンホープの夏目くん”なのだ。