素直になれない7センチ
「……っ、ぁ」
「ん?」
「ありがと……っ」
消えそうな声で俯きながら言うのが精一杯だった。
我ながら可愛げがなくって嫌になる。
もっと素直に待っててもらえて嬉しいとか、頭撫でられて疲れがとれてくとか言えたらいいけど……私はそんなこと可愛らしく言えない。
「俺が勝手にしたことだから、いいの」
それなのに夏目くんは柔らかな笑顔で包み込むように私に接してくれる。
嫌な顔一つ見せない。
夏目くんは私のこと怒ってないの? 嫌じゃないの?
あんなことしたのに……
「ねえ、香穂さん。俺のこと嫌い?」
「え?」
「俺、最低なことしたじゃん?」
「最低なことって……」
思いもよらなかった夏目くんの発言に目を丸くする。
気まずそうに夏目くんは目を伏せると、がしがしと頭を掻いた。