素直になれない7センチ
「あの日、無理矢理……香穂さんにキスしたでしょ。だから、ずっと謝りたかったんだ」
「それで話がしたかったの?」
「うん。傷つけたんだし、謝って済む問題じゃないってことはわかってる」
私がずっと夏目くんに対して酷いことしたって思っていたのと同じで、夏目くんも私に酷いことしたって悩んでいたの?
……自分の気持ちは言わないと相手に伝わるはずないのに、馬鹿だな私。
年々感情を伝えるのが下手くそになっていっている気がする。
「香穂さん、本当にごめんなさい」
「あのね……私も突き飛ばして、連絡無視しててごめんなさい。ずっと謝りたかったの」
やっと言えた。
あの日から抱えていた夏目くんへ伝えたかった気持ち。
「……じゃあ、仲直りしてくれる?」
「なんか子どもみたいだね」
目を合わせて笑いあう。
無邪気に笑う夏目くんに懐かしさを感じて、なんだか嬉しくなる。
わだかまりが消えてよかった。