素直になれない7センチ
————プレゼンも何事もなく無事に終わり、今日は早く退社できそうだ。
坂田さんたちとの女子会もあるし、仕事一段落してよかった。
待ち合わせのお店は会社から徒歩五分の場所だから、予約の七時半の十分前に出れば大丈夫そう。
体調がまだ本調子ではない真希を見送り、自分も退社準備を始める。
夏目くんの席が視界に入ったけれど、既に彼はいなかった。
……予定あるって言ってたもんね。
なんで気にしてるんだろう、私。
プレゼンも終わって、明日は休みだし軽い足取りで7センチのハイヒールを鳴らしながら会社を出る。
明日の休みは久々に岩盤浴でも行こうかなぁ。
そんなことを考えていると、見覚えのある二人組を発見して足を止めた。
「え……」
目を凝らしたけれど、やっぱり見間違いなんかじゃない。
水井さんと二人で並んで歩きながら路地を曲がっていく夏目くんの姿。
すぐに二人の姿は見えなくなって、呆然と立ち尽くす。