素直になれない7センチ
「本当ありえないんだけど!」
憤慨する坂田さんを宥めるようにピッチャーで空いたグラスにビールを注ぐ。
「絵里子ちゃん! 今日は飲むわよっ!!」
「……もう、男なんてやだぁああ」
泣き出す絵里子ちゃんの隣で女子会メンバーは店員さんにどんどんおつまみを頼んでいく。
店員さんはこの状況に驚いている様子で、視線が落ち着かない。
怒ったり泣いたりしている私たちに戸惑っているみたいだ。
「でも、結婚したいよぉ〜……」
結婚、か。
しばらく彼氏のいない私にとっては結婚ってほど遠いものに感じてしまう。
友人の結婚式を見ていても、自分があの場所に立つことが想像できないでいる。まあ、相手がいないから仕方ないのかもしれないけど。
「そういえば、なんだっけ? ……“システム管理部のイケメンホープの……夏目くん”?」
坂田さんから出てきた言葉にドキリとした。
別に私と彼の間に今更何かあったわけでもないのに。
夏目くんは水井さんとデート中なんだから……。