素直になれない7センチ



「えぇ〜、家まで送ってくれないの〜?」

大人なんだから自分で帰りなさいよ。



「もっと一緒にいたいなぁ」

甘ったるい女の声にますます心がギスギスしていく。



「あの、水井さん……そういうの困ります」


水井、さんって言った?

それにこの声って……



「夏目くんって彼女いないんでしょ? じゃ、いいじゃん〜」


嫌な予感しかしない。

いや、これは予感じゃない。確信だ。


水井さんと夏目くんなんてきっとこの辺りじゃ、私の知っている人たちに違いない。


うわあ……どうしよう。駅に行くには立ち止まって話している彼らを通過しなければならない。


そしたら、絶対気づかれる。

遠回りだけど道変えようかな。






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