素直になれない7センチ



————走った末に辿り着いた小さな公園のベンチに腰をかけて、ぼんやりと夜空を見上げていた。


罰が当たったのかもしれない。

あの頃の夏目くんの思いを踏みにじって、きちんと答えなかったから。


今更、彼のことを好きになるなんて。




ああもう……足が痛い。

ハイヒールで走るもんじゃない。



けど、足の痛みよりもずっと苦しいのは……あの光景を思い出してしまうこと。


また私は逃げてしまった。

夏目くんと向き合うことをいつも避けてしまって、自分を守ることばかりしてしまう。




「やっと見つけた……っ」


息を切らした声が聞こえて振り返ると、眉間に皺を寄せている夏目くんが立っていた。




「な、なんで……? え、うそ……え?」


水井さんといたはずの夏目くんがどうしてここにいるの?



「み、水井さんは?いいの?」

「タクシーに乗せた。勘違いしないでね。俺の歓迎会に何故かあの人も参加してきただけで、元々二人だったわけじゃないから」

「……けど、会社でた後に二人で歩いてるとこ見かけたよ?」

「あれは何故か周りがくっつけようとしてて、店初めての俺を水井さんに案内させるとか余計なことしてきただけ」


それで二人で歩いてたんだ。

そっか……。






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