素直になれない7センチ



「さっき泣いてたのはなんで?」

「あの……」


泣いてた理由なんて一つしかない。

だけど、その一言が喉元に突っかかってなかなか言えない。




「自惚れていい?」

「……えっと、その」

「俺、ずっと香穂さんのことが好きだった。今もそれは変わらない。香穂さんも俺のこと好きだって思ってくれてるの?」



恥ずかしくて、“好き”って言葉にできない。

視線を逸らして小さく頷くのが精一杯だった。



「俺、年下だけど……いやじゃない?」

「……ゃ、じゃない……です」


私にとって年齢よりも、相手の方が大事だ。

夏目くんが入社一年目の新人だって構わない。



夏目くんがいい。


夏目くんが好き。


夏目くんじゃないと、いやだ。




ぐっと引き寄せられて、抱きしめられたかと思えば耳元で掠れた声が届く。



「はあ……なにこれ。夢みたい」


ドキドキと鼓動が速まっていく。

温かい腕に包まれて、ふわりと香る柔らかくて甘い匂い。


夏目くんの香りと腕に包まれていることに私の方が夢みたいって思うよ。









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