素直になれない7センチ
「してもいい?……キス」
「そ、そんなこと聞かないで……っ」
なんでそんなこと聞いてくるのかな。
今絶対恥ずかしくて顔赤い!
「だって、昔してもいいのかなって思ってしたら突き飛ばされたじゃん」
「あれは……っ」
「言ってもらわないとわからないよ」
「い、意地悪! もうわかるでしょ!」
抱きしめられていた腕を離されて、少し距離をとる。
てっきり意地悪で言っているのかと思ったけれど、予想外なことに夏目くんの顔が赤くって目を見開いた。
「……わかんない。香穂さんが言ってくれるまで、しない」
「じゃ、じゃあ……ちょっと」
「……なに?」
拗ねたように唇を尖らせた彼を手招きをする。
顔を耳を私の方へ傾けてきた彼の正面に回り、ちゅっと触れるだけのキスをした。
「…………ごちそうさまです」
「か、帰る!」
顔が真っ赤な夏目くんを横切り、ハイヒールの痛みを堪えながら大またで公園の出口へと向かって歩き出す。