悲しみに、こんにちは3
「……ハル君?」
先輩は小さな声でつぶやいた
角を曲がった先で、長身の黒尽くめの男が立っていた
「遅いぞ」
先輩の家まであと200メートルもあった
「うそ、ハル君ったら、待っててくれたの!でも、まだ7時だよ」
「ちげえよ、バイト帰りだ
帰る時間くらいメールしろ、バカ娘め」
先輩はえへへ、ごめんねなんて
まんざらでも無いような顔をしている
「……すみません、俺の責任です」
俺がそう詫びたとき、その男は初めて
俺に気付いて、目を配った
出会って数分間、
その男はずっと先輩を見ていた
「……お前……」
男は、一瞬はっと驚いたが
俺が誰だかわかるとニヤリと笑った
俺はこの笑い方を知っていた
15㎝以上も身長差があるためか、俺の姿は男の影に隠れていた
正直、飲み込まれると思った。