悲しみに、こんにちは3

「……今、お付き合いしてる入家 皐月君……」

俺と男の間に流れる張り詰めた緊張感を破ったのは
ユズキ先輩だった



「入家……」


「そう、さくらさんの弟……」


ユズキ先輩は気まずそうだった

そりゃそうだ
好きな男を取った女に瓜二つの男と付き合ってるんだから




「姉がお世話になってます……」



俺の声は普段に比べて低かった
まるで、挑発しているようだと心中で苦笑いをした


「へぇー、さくらさんの弟だったんだ
よく似てんなあ」


ニヤついた男はまるで全てを知っているかのように
俺を見下ろす



「……ハル君……」

「ん?どうした、ユズ?」


そして、震えた肩で彼女は言う


「……ハル君は……私からは逃れらんないから……
私は、ずっとハル君のそばにいるんだから!!」


息を切らしながら先輩がそう言ったかと思うと、彼女は1人、その場から走り出してしまった。


俺ら2人を残して。
< 20 / 45 >

この作品をシェア

pagetop