悲しみに、こんにちは3
「……今、お付き合いしてる入家 皐月君……」
俺と男の間に流れる張り詰めた緊張感を破ったのは
ユズキ先輩だった
「入家……」
「そう、さくらさんの弟……」
ユズキ先輩は気まずそうだった
そりゃそうだ
好きな男を取った女に瓜二つの男と付き合ってるんだから
「姉がお世話になってます……」
俺の声は普段に比べて低かった
まるで、挑発しているようだと心中で苦笑いをした
「へぇー、さくらさんの弟だったんだ
よく似てんなあ」
ニヤついた男はまるで全てを知っているかのように
俺を見下ろす
「……ハル君……」
「ん?どうした、ユズ?」
そして、震えた肩で彼女は言う
「……ハル君は……私からは逃れらんないから……
私は、ずっとハル君のそばにいるんだから!!」
息を切らしながら先輩がそう言ったかと思うと、彼女は1人、その場から走り出してしまった。
俺ら2人を残して。