悲しみに、こんにちは3


「 あれ、せんぱーい!何してるんですかあ?」


呑気な声をあげて
部活終わりの入家君が駆け寄ってきた
まだ、彼はサッカー部のユニホームを着ていた



「ちょっと、ユズキ先輩、汚いですよっ!!」



顔をあげた私を見た彼は
ぎょっとした

まあ、そりゃあそうだよなあ……



「うーん、ちょっとねぇ……」


排水溝の蓋をあけて裸足で
中を探るわたしは
はっきり言ってかなり、臭い。


出来れば、彼にも近づいて欲しくない




「……どぶさらいですか?」



何してるんだと言いたげな彼は
若干、笑顔をひきつっていた



「ペダル探してるのよ」

「……ペダル?」


「そうよ、自転車の」



最近、塾通いを始めた私は時間短縮のために
自転車通学をしていた

今日も、帰ろうと思い自転車置き場に行くと、なんと自転車のペダルがないのだ



「……なんで、自転車のペダルが排水溝なんかに……」



「……うーん、ゴミ箱だとすぐわかっちゃうでしょ?
だからね、絶対に開けないであろうここなら……
あっ、ほらっ、あったよ!!」


泥まみれのペダルを差し出す



「ああ、ごめんね、汚いよね」

ふふっと笑う私を見る彼は
ずっとだまりこんでいた

わたしは北風が吹き肌寒さを感じていた



「入家くーん?おい、どうした?」


無表情の入家君の顔色が暗かった
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