セカンドパートナー
保健室に向かう途中、一階の渡り廊下から校庭が見えた。美術科の男子がサッカーをしてる。田中さん達が言ってた通り、並河君の姿もあった。
体育の授業中だから当たり前だけど、並河君が体操服を着てる。そのことに感動してしまう。上下ジャージで、寒さに頬を赤らめ、校庭を走っている。
制服以外の格好、初めて見た。絵や音楽が好きで、足まで速いなんて、なんかズルい。でも、さすが男の子。
ヤケドの痛みも忘れ、並河君の姿に見入った。
パスを待ちながら走る姿。髪が揺れて、そこだけ時が止まったみたいにゆっくり景色が流れていく。並河君は、まるで動く芸術品みたい。
結局、その試合中、並河君の元にパスは回ってこなくて、他の人がゴールを決めた。ゴールを決めた男子と両手を合わせ喜ぶ並河君が輝いて見えた。本当に嬉しそう。
あまりにジッと見過ぎていたのか、並河君がふとこちらを見た。まずい。目が合ってしまった!
大丈夫。あそこからここまではけっこう距離あるし、向こうも私だって気付いてないだろう。
何事もなかったかのように渡り廊下を走り去り、保健室に入った。保健室の先生はいなかった。
消毒、どこだろ。
探しつつ、胸の鼓動を感じていた。並河君と目が合ってから、心臓がおかしい。ドクンドクンと、早く鳴り続けている。
消毒はおろか、絆創膏の置き場所すら分からない。勝手に触ったらまずいだろうし、先生が来るまで待とう。