セカンドパートナー
こんなところで再会するなんて思わなかった。
驚くのは並河(なみかわ)君も同じらしく、彼も言葉を失い、私を見て目をしばたかせている。
「書道、好きだっけ?」
昔と同じ声。だけど、離れていた時間を思わせる深い瞳で、並河君は言った。
「どうして、ここに詩織(しおり)が……?」
空気がぎこちない。
メールでの気さくさがウソのようだと思った。内心テンションが上がる私と違い、彼は再会を喜んでいないみたいだ。
ずっと会ってなかったとはいえ、昔は毎日のように会っていた友達だから、表情からその気持ちはなんとなく読める。
ショックだ……。
それは自分でも予想していないほど深いもので、どうしてここまで傷つかなきゃならないんだろうと、理不尽な気持ちにもなった。
月に何度か交わす楽しげなメールはツクリモノだったのかと疑いたくなる。
だけど、やっぱり嬉しかった。
並河君に、ずっとずっと会いたかった。直接会えるなんて夢みたいだと本気で思った。
永遠にも思える一瞬。
色んな想いに駆られ、私はやっと口を開いた。複雑な心情とは真逆の明るい声が出た。
「好きかどうか分からないけど、とりあえず体験しにきたんだよ。やってみたら好きになるかもしれないし」
書道のことなんて正直どうでもよかった。並河君の存在にだけ、関心の全てがいってしまっている。