セカンドパートナー

 あの頃より男性経験を積み、男の人を知って、思うことがある。

 高校生の頃、並河君は私のことを少しは好きでいてくれたのかもしれないーー。だとしたら、彼が田中さんのマフィンにすぐ手をつけなかったのも分かる。

 人一倍敏感な羽留だけが、並河君と私の本心に気付いていた。だからマフィンを渡すのを反対してきたんだ。羽留も内心、無自覚な私にもどかしい思いをしただろう。

『並河君は詩織のこと好きだったと思うよ』

 この前の電話でもそう言われたけど、ついムキになって否定してしまう。羽留の言葉が間違ってたことなんて、今まで一度もなかったのに。


 考えてもどうしようもないことをグルグル考えながらレジに向かうと、女性に声をかけられた。

「詩織さん!」
「秋月さん……」

 並河君の現在の彼女であり、書道教室の先生でもある秋月香織(あきづき・かおり)さんに出くわした。

「ご近所さんって聞いてたし、もしかしたら詩織さんに会えるかもと思ってたらホントに会えた。お買い物?」
「はい。いつもこのくらいの時間にすませてるんです」
「そうなんだ。私も」

 相変わらず気さくな口調。どういうつもりか知らないけど、この人は私と友達になりたいと言ってきた。こっちは裏を感じて仕方ないのに。

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