セカンドパートナー
同い年とは思えないくらい、精神的に成熟してそうで容姿まで美しい。こんな人が並河君の彼女だなんて、世の中は不公平だとしか言いようがなかった。
彼女に気付かれないよう、ため息を漏らす。
「秋月さんも教室の近くに住んでるんですか?」
「近くっていうか、あそこは教室兼自宅なの。1階が教室で、二階は自宅」
「へえ、そうなんですね」
そういえば、秋月さんの教室はメゾネットタイプのアパートだった。
「新築でちょっと家賃も高いけど、気に入ってるの。タイミングが合えば奏詩(そうし)も教室の手伝いに来てくれるから合鍵も渡してある。奏詩のおかげで、詩織さんが初めて来てくれた日は助かったよ。あの日は車で外に出てたんだけど、渋滞で教室の時間に遅れそうだったから」
それはもう知ってる。どうしてわざわざそんな話をしてくるんだろう。
並河君の存在を意識しすぎなのか、気持ちがトゲトゲしてくる。
「自分も仕事があるのに秋月さんの教室を手伝ってくれるなんて、優しいですね。並河君は」
「優しい、か……。私もそう思うよ。でもね……。ワケありの関係なの。私達」
ワケあり物件に住んでますと言うように軽いノリで、秋月さんは言った。
「このこと、教室の生徒さん達は知らないから、詩織さんと私だけの秘密でお願いね」
秋月さんは伏し目になり、長い髪を耳にかけた。ワケありの関係? それ、どういう意味?
気になるものの、友達でもない女性の恋愛事情を根掘り葉掘り訊く神経は持ち合わせていない。
お互いにレジで会計をすませると、どちらかともなく店の出入口に向かう。
車で来ているらしく秋月さんは駐車場に足を向けた。徒歩で来ていた私はさりげなく彼女から離れるように歩いた。