セカンドパートナー
これで帰れると思うと、とりあえずホッとする。
「それじゃあ、また教室で」
「詩織さん……!」
「はい…?」
秋月さんの方に振り向くと、彼女は不安そうな顔でうつむき、そして、確かめるように私の目を見つめた。
「奏詩、言ってたの。忘れられない女性がいるから、どの女性とも気持ちを入れた深い関係にはなれないって……。それでもいいからって、私は無理言って付き合ってもらってる。その人を忘れるまでそばにいると伝えたの」
ワケありって、そういう意味? ちゃんとした両想いではない、と。
秋月さんが悲しげに語る一方、私の心は明るくなっていく。性格悪いな、これ。ここまで人の不幸を喜べるだなんて、思ってなかった。
何かに引き寄せられるように、秋月さんを見つめた。
「でも、本当は私だけを見てほしい。結婚したい。一生そばにいてほしい……。自分から言い出したことだけど、こういう関係はそろそろ終わりにしたい」
二人は2年前に知り合い交際を始めたと言っていた。2年、か……。たしかに長い。
「並河君はいい加減な気持ちで女性と付き合ったりする人じゃなかったです。高校時代の並河君しか知らないので、こんなことしか言えませんが……」
思ってもないことが、口からスラスラ飛び出した。
「高校の頃、秋月さんほど素敵な女性、彼の周りにはいませんでしたよ」
「……詩織さん」
言っている最中、心臓が嫌な音で鳴り続けた。