セカンドパートナー
ホッとした。この話、流れた?
諦めたようにうなずくと、秋月さんは帰っていく生徒達にさよならと声をかけ、にこやかに手を振っている。
私達が話している間に教室の時間は終わっていた。私も帰る支度をした。
生徒達が全員いなくなり、教室には秋月さんと私だけになった。さっきまでは他の人の気配があってまだよかったけど、こうして改めて二人きりになると、教室の静けさに緊張する。
「では、私も帰ります。ありがとうございました」
「さっきの話なんだけど、詩織さん達の予定に合わせるよ」
「え……?」
まだ、その話終わってなかったの?
秋月さんから執念のようなものを感じ、顔が引きつってしまう。必死にポーカーフェイスを意識した。
「奏詩、昨日から1ヶ月の休暇を取ることになったの。だから」
「画家って、そんなに休んでいいものなんですか? よく分かりませんけど……」
「美大を卒業してから今までほとんど休みなしで絵に打ち込んでいたから、そろそろ休みたいんだって。彼は今、行きづまってる」
「そうだったんですか?」
「大丈夫。すぐに元の彼に戻るはずだよ。どんな作物をも立派に育てあげる良質な畑も、耕し寝かせる時間がないと、栄養がなくなって作物を育てられなくなってしまうから。それと同じ」
並河君、そんなに煮詰まっていたんだ。知らなかった……。
メールで個展の報告を受けるたび、順調にやっているのだとばかり思ってた。でも、よく考えたら、疲れるのも当たり前かもしれない。高校の頃からノンストップで作品を描いてきたのだから。