セカンドパートナー
自分の心にあることを話すのに苦手意識と抵抗があった私は、得意の愛想笑いでごまかした。
「ううん、何もないよ。それより、並河君も帰り? 誰か待ってるんじゃないの?」
取って付けたような私の質問には答えず、並河君はじっとこっちを見つめる。
「足取りと目が、いつもと違う」
「……え!?」
そんなことを言われたのも初めてだった。さすがに動揺を隠せず、アタフタした。
「そ、そうかな? いつも通りだと思うけど……」
「詩織の変化はすぐ分かる」
真摯な彼の声が、心の奥まで優しく突き刺さった。涙が出そう…。
「並河君……。友達待ってるんじゃないの?」
潤んだ目でごまかす私に、並河君は優しい視線を返した。
「詩織のこと待ってた。一緒に帰ろ」
「……うん」
それ以外、答えは見つからなかった。
男子と下校なんて初めてだし、緊張した。それに、こんなところ見られたら学年中のウワサになるだけ。
だけど、この時はどうなってもいいやと思えた。並河君がそばにいてくれるから。
帰りながら、並河君は話を聞いてくれた。
小4の頃習わされた書道も3ヶ月でやめてしまうくらい書道の授業が苦手だと話すと、彼はこう言ってくれた。
「よく頑張ったな。詩織は偉い! 俺だったら3日でやめてる」
「……あははっ! 3日はさすがにまずいよ」
「だな!」
並河君の言葉に、張りつめていた心が軽くなっていく。
「これからは詩織の好きなことできるといいな。また何かあったら言えよ?」
頼もしく笑いポンポンと私の頭を撫でてくれる彼を見て、胸が異様にドキドキし、同時に安心感に満たされる。
並河君ともっと仲良くなりたい。彼のことをもっと知りたい。初めてそう思った瞬間だった。