セカンドパートナー

 羽留も違和感を感じている。

「そう思って最初は断ったんだけど、結局行くことになった……。秋月さんの教室ってメゾネットタイプのアパートでやってるんだけど2階が自宅になってるから、そこ使って、近いうちに並河君と優人も呼んで4人でやろってことに……」
「マフィンの田中さんと近いもの感じるね。こわい」
「だよね。私もそう思った」

 断れるものなら断りたいけど……。

 羽留に話したことで、どこか実感のなかったメンバーでの鍋実行が現実味を帯びる。

「気になるのはそれだけじゃないんだ……」

 前置きし、私は続きを話した。

「並河君が秋月さんと付き合ってるのは仮の交際というか、本気じゃないんだって。この前たまたまスーパーで会った時、秋月さんが言ってた」
「何それ。並河君は遊びってこと?」
「並河君には忘れられない人がいるから、どんな女の人とも深い付き合いはできないって秋月さんに言ったらしいよ。秋月さんはそれを承知で付き合ってるけど、最近はそれが苦しいんだって……。それに、並河君、1ヶ月仕事休むんだって。突然絵が描けなくなったとかで……」

 半分だけ秋月さんの気持ちが分かる。

 並河君には好きな女性がいる。それはきっと叶わない恋。だから一人で想い続けている。彼は、その恋を忘れるために秋月さんと付き合っている。

 そういうことなら、あの時私の呼び出しに応じなかったのも理解できる。他に好きな人がいたのなら仕方ない。そんなのつらいし、悲しいけど……。

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