セカンドパートナー
「……そうだったら嬉しい。でも、そうじゃないって、あの時来なかった時点でハッキリしてるから。ありがとう。羽留」
「気休めなんかじゃない。本気で言ってるの! ずっと二人を見てたから、分かる…!」
大切な話だと思った。
私は席に戻り、音を立てないようバッグを置いた。
「たしかに詩織は結婚してる。あたしも一応既婚者だから、恋愛どうのこうので好きに振る舞えないって立場は分かるつもりだよ。でも、想いは伝えなよ」
「……伝えてどうにかなるものでも」
「結果はどうでもいいの。伝えることが大事。じゃないと、並河君も、詩織も、きっと前に進めない」
その通りだ……。
実際、気持ちをうやむやにしてきたせいで、並河君とは妙な関係のまま、想いだけを引きずることになってしまった。
「あと、これは、芸術家並河奏詩のファンとして言わせてもらうね」
羽留は意志のこもった強いまなざしで私を見つめた。かすかにその目は潤んでいた。
「また、並河君の作品が見たい。描けなくなってるって聞いて、すごくショックだよ……。高校の頃からあの絵が大好きだった。さすがにそんなお金ないから海外の個展に行ったりはできないけど、並河君が作画した絵本は全部持ってる」
知らなかった。高校の時もそういう話は少し聞いたけど、泣きそうになるくらい羽留は並河君の絵が好きなんだ……。