セカンドパートナー
その時、仕事が忙しいのも本当だった。
今と違い、派遣会社を通して有名な大手工場に勤めていた。週休二日と言いながら土曜日も出勤しなくてはならなかったし、平日も9時から17時まで働いた後、二、三時間の残業を毎日のように頼まれた。
車校にも通ったのでさらにきつかった。本当なら免許は大学にいる間に取りたかったけど、金銭的にそこまでの余裕がなかったので、働いてからの取得になってしまった。
時間があるうちは一秒でも長く家で寝ていたい。それくらい心身共に疲労していた。
疲れはしても仕事自体はやりがいがあったし、派遣会社から来ている人達は皆いい人だったので、休憩中はカードゲームなどで盛り上がり楽しかった。顔を見るたびネチネチ嫌味を言ってくる嫌な社員もいたけど、お金のために辞めるわけにはいかなかった。
残業代もちゃんともらえたので、瞬く間に貯金が増えた。貯金通帳を見ると仕事での疲労感が癒え、快感を覚えた。
大学で受けたのは返還制の奨学金だったので、それを返すために普通の就職はせず時給の高い派遣会社で働くことを選んだ。今でも貯金はかなりの額残っているので、その選択は正しかったと思う。
「義理の親だからって、あそこまで言う!? 実家に帰れとかさ。ひどくない?」
私がそう言ってようやく、優人は義母に言い返し私をかばったが、そばに居たんだからはじめから気付けよと思った。
ムシャクシャした気持ちが収まらず美季に話したら、
「ムカつくね! 育ての親だし、優人君も感覚が麻痺してるのかもね。悪気はないと思うよ〜」
と言われた。麻痺、か。そうかもしれない。
不服だけど、育った環境はどうにもならないのは私も同じ。そういうものなんだと割り切ることにした。
「普通そこまでしないよ。あげるとしても母の日だけでいいって! 詩織ばっかりそんなに気遣うのおかしい!」
羽留にはそう言われたけど、新婚当初は、バレンタインや父の日、母の日、義両親の誕生日には毎回プレゼントを贈った。会いに来ないことで文句を言われたくないからだ。
でも、今は、バレンタインと誕生日は削っている。そこまでする気持ちがない。