セカンドパートナー

 新婚の頃、母の日の日付を勘違いして遅れて渡してしまったことがあった。すると義母は、

「持ってこないかと思った!」

 と、それだけ言った。

「すみません。日付勘違いしてたんです。もともとちゃんと用意するつもりでしたよ」

 にこやかに謝り話を合わせたものの、もらえて当然という態度が気に触った。

 慎ましさのかけらもない。思ったことを何でも口に出して言っていいと思ってる。されたことに感謝もしない。他人の気持ちを想像しない無神経な発言。傲慢過ぎる。

 女は女らしくしろだなんて言うつもりはないけど、もっとまともになれないのだろうかと思った。

 初めて義母にあげた母の日のプレゼントはカーネーション。その年初めて参加した優人の祖父の葬式で、私がそばにいるのに義母は親戚の人にこう言った。

「私、カーネーションあまり好きじゃないんだよ」

 祖父の代わりにお前が死ねばよかったのに、ていうか今すぐ死んで。そう、真っ先に思った。何もかも限界だった。


 冷静になって考えれば、仕方ないのかもしれない。義両親は世間知らずだ。

 自営業で飲み屋をやっているものの、その店は義母の親の代から続いたもので、常連客は義母が子供の時から知っているような人ばかり。50を過ぎた義母を、常連客らはチヤホヤする。

 金持ちの客なんかは万単位のお金をこづかいと言い義親に渡す。ゴルフやタクシーでの移動をおごったりする。

 近所の人も、両親も、同居の祖父母も、一人っ子の義母を可愛い可愛いと言って大切に育てたそうだ。高校時代、同じ学校の義母に惚れた義父は猛アタックで義母に迫り、調理の修行をして店を一緒に継ぐと決めたという。

 店は義母のもの。当然義父は尻に敷かれているし、本人もそれを喜んでいる。いつだか、義母は自慢げに言っていた。

「怒って聞かせれば子供は言うこと聞くわ。反抗なんてさせたことない」

 優人は、義母のそういう性格が嫌で昔は気を遣ってばかりだったらしく、家に帰りたくなかった、あの家から出たくて仕方なかったと、不満をもらしていたことがある。

 義母がそういう性格になるのは当たり前だ。不満がある時は口を開けば周りが思い通りに動くと思っている。

 それは家の中だけで通じるのであって、外では通用しないことを知った方がいい。義母の横暴さに、内心嫌な気持ちになる人は多いだろう。

 スーパーの店員などにも、高圧的に「新鮮なの出してよ!」「こういうやり方に変えろ! 客が迷惑する!」等、あれはこうしろそうしろと、命令口調は当たり前。その店のやり方というものが見えていない。

 もし同い年だったとしても、義母とは友達になりたくない。

 言いたいことは山ほどあるけど、話の通じる人間じゃないことは分かりきっているので、義母の言動はなるべく受け流すようにしてきた。

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