セカンドパートナー
懐かしい回想に、少しだけ癒された気がした。
私が初めて胸の内をさらけ出した日のことを、並河君は覚えていてくれた。
それだけで充分かもしれない。今、彼が再会を喜んでくれていなくても。
優しい気持ちになれた私は、まだ消えない気まずい空気を無視して並河君を見つめた。
「並河君も書道習ってるの? ここって大人のための教室らしいし」
「ううん、俺は……」
うつむき、並河君はその場を去ろうとした。
「帰るの?」
待って! もう少しだけ話をしていたい…!
「先生そろそろ来るよ…!」
「……だな」
高校時代と変わらない苦笑いを浮かべ、並河君は留まった。自分でも意外なくらいホッとした。
先生が来る、だなんて、並河君を引き止めるための言い訳だったけど、教室開始の時間は本当に迫っていた。
生徒さんなのだろう、男女問わず初老か中年と思われる年齢の人が次々と集まってきた。一人の優しそうなおばあさんが私に声をかけてきた。
「初めて見る顔ね。見学の人?」
「はい」
「若い人が来るなんて珍しいわね。おいくつかしら?」
「33です」
「そう! もっと若い方かと思ったわ。それなら先生と同じくらいだし、話も合うんじゃないかしら。よかったわね」
場を和ませるため、初対面の私に気を遣ってくれているのだと分かる。でも、おばあさんとの会話で胸が重たくなった。
同じくらいの歳の人がいたら仲良くしなきゃいけない、と、言われた気がして。