セカンドパートナー

 でも、最近、そうはいかなくなってきた。

 チハルちゃんが義家族に加わるということで、義両親はやたらと私達夫婦を家に呼びたがる。当然のようにチハルちゃんカップルもいる。

「詩織ちゃん、ウェディングの写真まだ撮ってないでしょ? チハルと一緒に撮ってきたら?」

 自分だって義父の弟夫婦と仲良くないくせに、人にはそれをさらっと強要する義母の神経。チハルちゃんの存在は知っていたけど、会うことはなかったので彼女と私は初対面も同然。なのに、やたら一緒に行動させたがる。

「そうですね、予定が合えば」

 愛想笑いでかわすけど、いちいちストレスがたまる。予定なんか、絶対合わせるものか。

 チハルちゃんは義母に似ている。普段は丁寧な話し方をしていい子を装っているけど、ふとした時にボロが出る。そういうのは、知りたくなくても気付いてしまう。

 貝系の食べ物が苦手な私に、義母は言う。

「チハルも苦手だったけど、ウチに来くるようになってからハマグリもサザエも食べれるようになったぞー」

 あー、はいはい。そうですか。チハルちゃんと比べられてもね。別の人間だし。消化酵素の種類は人の体質で違いがあり、それが味覚の好き嫌いとして表れるんですよ。飲み屋経営してるのに知らないんですか? 心の中で皮肉を言う。

 チハルちゃんはチハルちゃんで厄介な存在だ。彼女はやたら、私を義家族に近付けようとする。

 今度、お兄ちゃん(優人)と一緒にご飯行きましょうよ〜。

 一緒にママ(義母)の家に遊びに行きましょ? 三人で買い物とか行きたいですー!

 うざい。なんだこいつ。

 義母と私の仲が良くないことは知ってるはずだ。そうでなくても見ていて分からないだろうか。

 チハルちゃんはただただ義母に気に入られたいのだろう。義母が喜ぶことをしたいから、そのためには誰にでもいい顔をし、よく知らない年上の私すら利用しようとする。

 過去にも何度か出会った、嫌な女の典型。見え見えなんだよ。自分を売り込みたいなら人を使わず自分の力だけで勝負しろ。そう言いたい。
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