セカンドパートナー
チハルちゃんに非はない。結婚相手の親に気に入られたいというのは、いたって普通のことだろう。
彼女は私より年下なのにしっかりしてるし、女手ひとつで子供を育てて立派だ。偉いと思う。今までつらいこともたくさんあったはずだ。結婚が決まってよかったと、それなりに祝う気持ちはある。
だけどやっぱり、チハルちゃんのことは大嫌い。
優人がチハルちゃんに優しくしたり、彼女に頼まれてマカダミアナッツの殻を取ってあげていたことも実は不満。
今まで、何度離婚したいと思ったか分からない。
嫌なことばかり起きてつらい。離婚したい理由はそれだけではない。
積み重なるストレスに、自分が自分でなくなっていく。他人の嫌な面ばかりクローズアップされて、人を好きになれなくなっている。自分が年々嫌な人間になっていく。嫌いだからとそれだけで口汚い言葉を平気で心に並べてしまう。
それが嫌だった。
昔つけたはずの自信はとうになくなり、自己否定の感情に溺れそうになる。
こんな自分だから義家族とうまくいかないんだと自分を責めた。
もうダメだと思った。
優人に愛されているのかどうかも分からない。
羽留の言葉は、泣けるほど嬉しかった。
「だから、自信持って! 詩織はそこにいてくれるだけでいいんだよ」
「……羽留」
「並河君に気持ち伝えてスッキリすることはあっても、絶対、悪いようにはならないから」
まだ、私を認めてくれる人がいる。
大切にしてくれる人がいる。
結婚10年目で子供がいなくても、33歳でも、心の中で義家族を嫌っていても、旦那に想われている自信がなくても。
「詩織のこと、ずっとずっと大好きだよ。並河君も、きっとね」