セカンドパートナー
いつか羽留が言ってくれた言葉を思い出した。
『はあ!? 義母にそんなこと言われたの!? 何様? 仕事って言ってんだから普通は理解するって。それに、そんなこと言われたらよけい嫁は寄り付かなくなるって! いじめかと思う! 言い返さなかった詩織は強いよ。よくがんばったね』
『私も、義母に『結婚してても女は子供産まないと一人前じゃない』って言われてさ、腹立ったよ。義理の家族とはいえ元は他人なんだから、もう少し言葉に気をつけてほしいよね。ホント無神経!』
羽留は、仕事の都合で子供を望める状態ではない。
二十代後半から三十代前半。私達くらいの年齢は、パート勤務の仕事を見つけることすら難しい。
「結婚してるの? そう……。でも、そのうち子供産んで辞めるよね?」
実際羽留はそう言われ、何度も面接を落とされた。なので、人間関係のストレスがある今のパート勤務も、簡単には辞めたくないと言った。辞めたいと愚痴をこぼすにとどめている。
一概には言えないけど、パートさんを募集しているほとんどの会社は、若くてまだ結婚を考えていない人か、子育てを終え長く働ける見込みのある年配の方を求めている。
昔に比べ育児休暇を設ける会社は増えたけど、女性全体にまでその恩恵が来ていないのも事実。
会社に迷惑をかけてしまう。お金が必要だから外で働きたい。そういう事情であえて子供を作らない羽留も、世間の風当たりの強さを感じている。
子供がいない女性は半人前?
子供のいる女性より下?
そんなことはない。
子供がいる人いない人、苦労の種類は違うけど、皆、同じだ。一生懸命生きているのだから。両者を比較してどちらかを持ち上げるなんて悲しいことはやめてほしい。
子供がいる家庭、いない家庭。どっちが偉いとか立派とかない。そうやって区別せず、貶めたりせず、どちらも存在していて当たり前。結婚後の子供の有無はどちらでもいい。自由。
そういう社会が、早く来てほしい。