セカンドパートナー

「こんなこと言ったらビックリするかもしれないけど、ずっと前から、私ーー!」
『うん』

 言葉を待っている気配。

 並河君に、最後に、甘えた。

「並河君のこと、ずっと好きだったよ」

 口にしたら止まらなくなった。

「鈍感でごめんね。高校の時、田中さんのマフィン本当は渡したくなかったよ。二人が付き合った時、ショックで悲しかった」 
『だから避けたんだ』
「ごめんね。どんな顔で並河君としゃべったらいいのか分からなかった」
『詩織のウソつき』

 冗談ぽく、並河君は言った。

『彼女ができたら応援するって言ったのに』
「ごめんっ。ホントそうだよね。私、ウソつきだね……」

 この感覚、とても懐かしい。

 並河君と話していると、いつもそうだった。無意識のうちに自分の素直さが引き出されて、優しい気持ちが溢れてくる。

 自分でも知らなかった女っぽさが自然に出てきてしまう。変な感じなのに、どこか幸せで……。

 高校の頃が、そのまま戻ってきたみたい。

『ウソだよ。詩織をそうさせたのは俺だ。ごめんな』
「ううん。応援しといて避けた私が悪いよ。並河君は田中さんの気持ちに応えただけ」
『応えてないよ。利用しただけ』
「利用?」
『田中さんと付き合って、詩織を傷つけたかった。泣けばいいと思った。あてつけだよ、完全に』

 それって……。

『他の女子といる俺を見て、詩織に嫉妬してほしかった。誰よりもそばで守りたいのに、詩織を傷つけるのは俺だけがいい。それくらい深く、詩織のことが好きだったんだよ』










 ーー求めるもの(終)ーー

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