セカンドパートナー
並河君の母方のおばあさんには何度か会ったことがある。亡くなっていたなんて、知らなかった……。
高校の頃、週に一度、週末だけ、並河君は私と同じ方向の電車に乗っていた。それは、一人暮らしをしているおばあさんの顔を見に行くためであり、おばあさんが住む広い屋敷で絵を描くためでもあった。
自宅にもアトリエはあるけど、落ち着いて描けるのは少し古びたお屋敷のアトリエ。週末だけはそこに泊まって課題に集中したいと、並河君は言った。
羽留や私が利用する大型駅の近くにおばあさんのお屋敷はあった。それもあり、並河君に誘われて私も何度かそのお屋敷に行ったことがある。時々、羽留も一緒に。
私達はそこを、お屋敷のアトリエと呼んだ。広大な庭には木々が広がっており、昼間でも奥の方は薄暗かった。
そんなに大きな家に招かれるのは初めてで最初は少しこわかったけど、それがいいのだと言う並河君を見て、私もすぐ好きになった。
正月でも厳しい顔をしていたウチの祖父母と違い、並河君のおばあさんは優しく仏のような顔をしていた。
昔、このお屋敷に生徒さんを呼んで茶道の先生をしていたらしく、私や羽留の顔を見ると、こだわりのお茶と共におまんじゅうやせんべいを出してくれた。
アトリエで並河君が絵を描く後ろ姿を眺め、おばあさんは彼の昔話を聞かせてくれた。
「奏詩はね、3歳の時から絵が好きで保育園の先生にもよく褒められていたのよ。お友達にも描き方を教えたりしてね」
「おばあさん、そういう話はやめてって!」
「あらあら、照れてる」
学校では見られない並河君の表情。
並河君は恥ずかしがっていたけど、私はおばあさんの話が聞きたくて時折質問を返した。