セカンドパートナー

 私を抱きしめたまま、彼は言った。

「あんな飲み方身につけるまで我慢して、長い間苦しかったよな……。高校の頃から何でも話聞くって言ったのに、気付けなくてごめん。ごめんな……」
「どうして並河君が泣くの?」
「好きだからに決まってる」

 昔と変わらず優しい言葉に、涙がこぼれた。

「詩織がつらいと、俺もつらい」

 そんな言葉をくれても、秋月さんとの結婚はやめないクセに。私をなだめ終えたらこの腕を離してしまうクセに。

「こういうのやめよ……。秋月さんに見られたら今度こそ言い逃れできないよ」

 並河君から離れるため力を振り絞ったけど、びくともしない。

「さっきついたウソが全部無駄になる。何もないなんて信じてもらえなくなる…!」
「……離したくない」

 並河君は言い、しばらく私を抱きしめていたけど、

「そういうわけにもいかないよな」

 諦めたようにそっと体を離すと、私の手を引いた。

「待って! まだ気持ちの整理が……」

 抵抗し、その場で踏ん張った。

 もう、楽しい鍋はできない。優人との関係も崩れた。秋月さんにも合わせる顔がない。

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