セカンドパートナー
「分かってる」
「並河君…?」
秋月さんのアパートではなく、並河君は駅方面に向かって私の手を引いた。
「車出してあげたいけどさっきだいぶ飲んだから、電車乗ろ」
「どこ行くの?」
「俺達の高校、見に行こ」
「今から?」
私に気を遣ってアパートから離れようとしているのは分かる。気持ちはありがたいけど、ついていくわけにはいかない。
「秋月さんのこと心配じゃないの?」
「香織とは別れる。結婚もしない」
はっきりした言い方だった。
「秋月さんはそれで納得する?」
心配するふりをしつつ、本当は嬉しかった。並河君は、秋月さんより私を選んでくれた。
「恨まれることになってもかまわない。そうでなくても、俺は一生詩織を好きでいたと思う」
もし私が外に飛び出していなければ、並河君は結婚をやめずにすんだ?
「そんな気持ちで結婚を決めた俺が悪いんだ。詩織は悪くないからな」
「……うん」
私の罪悪感を敏感に感じ取り、言ってくれる。
「詩織を好きでいたい。この先もずっと」