セカンドパートナー
そのうち電車はスムーズに走り出す。息苦しい世界から逃がしてもらったような感覚がした。
目的地に着く頃、車内は私達だけになっていた。
「全然変わってないね」
「そうだな。周りは少し家が増えてる」
「ホントだ。前は田んぼばかりだったよね」
高校の最寄駅で電車を降りる。寒気がした。空気がいっそう冷えている。
この場所で一人並河君を待ち続けた卒業式の翌日を思い出した。あの日も、今夜と同じ、月の綺麗な夜だった。
反対側のホームにも人はいなくて、私達だけがここにいた。
「……あの時、駅に泊まり込んででも並河君を待てばよかった。こっちから電話すればよかった。これじゃ何のためにケータイ持ってたのか分からないよね」
見上げた夜空。星が綺麗すぎて泣けてきた。
空はあの頃と変わらないのに、私達だけは変わっていく。変わりたくないのに、どんどんと。
幸せになりたくてがんばった。いつも納得いく答えを選んできたはずなのに、どこで間違えたんだろう?
「どんな形でもいい。一生詩織のそばにいるって決めた」
「……!」
肩を抱き寄せられ、頭に軽くキスをされた。
「え……?」
一瞬のことに、思考が止まる。
「俺を見て。詩織」
頬に、まぶたに、羽根が落ちたような柔らかいキスをされ、そして、互いの唇が重なりそうになった。