セカンドパートナー
並河君のことが大好きなのに、こんなに後ろめたい気持ちになるのが悲しかった。並河君に対しても、好きより申し訳ないという感情が先走る。
「詩織。卒業式の日、校章交換したこと、覚えてる?」
「……う、うん!」
これはこれで、ドキッとしてしまう話題。
「詩織は知らなさそうだったけど、あの高校にはジンクスがあったんだ。好きな人と校章を交換すると両想いになれるって」
「……らしいね。卒業後に知ったよ。羽留がお世話になった音楽科の先生に聞いて」
校章の交換は、並河君なりの告白だったのかもしれない。
「並河君は、そういうの知ってて交換しよって言ったの?」
「そうだよ」
「そういうの、信じるんだ」
「うん……。あの時は信じた。信じたかったって言う方が正しいかもしれないけど」
並河君は、深い瞳で言った。
「詩織とあのまま進路が離れるのは嫌だった。大学行ったら出会いもあるだろうし……。詩織が誰かを好きになるところ想像しただけで苦しかったよ。想いが通じるのなら何にでもすがりたかった。……今、思うよ。あの日、思い切って詩織のクラスに行ってよかったって」
「ウワサの件で謝ってきた時のこと?」
「そう。何でもいい、詩織と話してみたかった。変に思われないか不安で仕方なかったけど、勇気出してよかった。おかげで、今こうしていられる」
並河君が私を気にするようになったきっかけは、クラス表で見かけた名前。それだけで、ここまで好きになってくれるものだろうか?
両想いになったとたん、今まであまり考えなかったようなことを考え、不安になる。さっきから気持ちが落ち着かないのもそのせいかもしれない。並河君のこと、信じているのに……。