セカンドパートナー
並河君はクスッと笑い、手をつないでいる方とは反対の手で私の頭を撫でた。優しい手つき。
「そうやって抑え込むの、詩織の悪いクセだな」
「……だって」
「長年の親友歴を経て恋人になったんだ。そんな簡単に壊れる関係じゃないだろ?」
「そうだけど、友達と恋人はやっぱり違うと思う。恋人の並河君に嫌われたくない……」
「詩織が嫌いと思ってる部分も愛しいよ。何でも言ってほしい」
「……」
手に入れたばかりの幸せは想像以上に大きくて、妄想とは別の甘さがあって、だからこそ、ちっぽけな私には扱いきれないのではないか、そう思えてならない。
口にできない私の思いを察したように、並河君は元気に語り始めた。
「初めて詩織にキュンとしたのは、あの時だったな」
並河君が言うあの時とは、私が天使(てんし)ちゃんというあだ名について不満をこぼした時のことだった。
「『そんなガラじゃないし』。ボソッとそう言ってたよな。心底不満そうに。それが嬉しくて、詩織のことますます好きになったんだよ」
「そこで!?」
男子を中心に天使ちゃんと呼ばれていたけど、私には全然似合わないあだ名だと、昔から思っていた。