セカンドパートナー
『小学生の時は我慢してたけど、高校生にもなって天使ちゃんとか、痛すぎ。普通に天使(あまつか)さんって呼ばれたい。そんなガラじゃないしさ』
たしか、そんな感じで並河君にグチをこぼした記憶がある。
男女別に行われる体育の授業。たまに、男子と女子で体育館を分け合って使わなければならない時があった。並河君にそんなグチを言ったのも、そういう日の放課後だった。
体育は苦手。球技なんてもっと嫌。中学の頃、体育の授業でやったバレーやバスケで上手に動けなくて、運動部所属の女子から「天使さん、やる気ある!?」と、怒られてばかりだった。
皆が皆、球技好きなわけじゃないし、と、内心うんざりした。
さすがに高校生ともなるとそこまで熱を入れてがんばる女子もいなかったけど、すでに体育への苦手意識は頭にこびりついていた。
早く終わってくれ。ダルい気分でバレーをやっていると、
『あの天使ちゃんがバレーやってる! ボール取れなさそうだよな』
一部の男子がコソコソ話してるのが聞こえた。どうせ取れないよ。見てくるな。自分の授業に集中しろ。
そんな気持ちで、やさぐれていた。自覚している苦手分野をいちいち人に指摘されるのは気分が悪い。だから、並河君にグチる時も、いつも以上に言葉にトゲがあったかもしれない。
並河君は、そんなことで胸をキュンキュンさせたというのだろうか。よく分からない。
「普通、男子って女子のグチとかマイナスの話聞くの嫌がるっていうか、めんどくさがって相手にしないんじゃない?」
「そうなの? そうだな。たしかに他の女子の話はそこまで興味持って聞けないけど、詩織の話は別。めんどうだなんて思ったことない。むしろもっと話してほしいと思ってた。女性だって人間だし、心が繊細だろ? これは詩織と友達になってますます実感したことだけどな」
だから並河君は、私のことを受け止めてくれるんだね……。