セカンドパートナー
「そうやって言えるのは、並河君がもともと達観してるからじゃない?」
「それ昔からよく言われるけど、そんな意識ないな。それに、達観してるんだとしてもそれは愛されたくない理由にはならない」
並河君は言い、後ろから抱きしめてきた。
思い出の場所を眺めながらそんなことをされるなんて、恥ずかしいような嬉しいような。
「あの頃、美術科のアトリエに一人で遊びに来た詩織は無防備で、何度こうしたくなったか分からない」
「まだ酔ってるの?」
「酔ってても酔ってなくても、詩織にはいつでもこうしたい」
抱きしめられ、胸が熱くなった。
「でも、やっぱり分からないよ。グチ言われて胸がキュンとか」
「好きな理由って、言葉で説明しながら並び立てたとたんにウソっぽくなるというか価値がどっと下がるような気がするから、もっとスマートにサラッと伝えられたらいいんだけど……。なかなか難しいな」
そう前置きをし体を離すと、並河君は私の体を自分の方に向かせた。優しい顔と目が合った。胸がとくんと音を立てる。
「俺にだけ素の自分見せてくれたことが嬉しかった。詩織、他の人の前では一切そういう顔見せないで笑ってただろ?」
その通りだ。大人になった今でも、そう。
「詩織のこと褒めてる男子他にもいたけど、その誰も、詩織のそういう顔を知らない。心の中を俺にだけ見せてくれる。そう思ったら、キュンキュンするしかないだろ?」