セカンドパートナー
並河君の口からキュンキュンという言葉が出るのが何だかおかしくて、笑いが込み上げてきた。
「あはは! 真面目な顔してキュンキュンとか! 並河君、面白いっ」
「こらっ! 人が真剣に話してるってのに。……って、たしかにおかしいよな。普段こういう言葉使ったことない。はははっ!」
並河君は困ったように言い、それでも一緒に笑ってくれた。寒さなんて忘れてしまう。
あの頃から、並河君はきっと見抜いていた。私の弱さや汚さ。臆病な心を。それでも、好きになってくれた。逃げずに話を聞き、一生懸命向き合おうとしてくれた。
思い出のひとつひとつを心にしまっていく。
あの頃の続きであり、二度と手にできなかったはずの時間。この時が、永遠に止まればいいのにーー。
外周を一回りする頃には、目が暗さに慣れていた。真っ暗だった夜空に雲が流れている。静かな雪もいつの間にかやんでいた。
体を寄せ合い、私達は空を見上げた。
「……あ!」
声が重なる。流れ星が流れた。
「願い事言うヒマ、なかったね」
「一瞬だもんな」
「心の中で3回願い事をすると叶うって、本当かな?」
「達成した人がいるなら会ってみたい」
喉が渇く。
並河君にかしてもらった上着のポケット。入れておいたペットボトルのハチミツレモンを取り出すと、すでに冷え切っていた。あんなにあたたかかったのに。
私達の関係がもたらす未来を映したような……。そんな冷え方に感じた。
深い悲しみが、何の前触れもなく胸に込み上げてくる。