セカンドパートナー
「傷つくことかもしれない。でも、聞きたい。知らないままは気持ち悪い」
私が強く静かにそう言うことで、並河君はようやく口を開く気になった。彼の口調は最後まで不本意そうなものだった。
「詩織に振り向いてもらうため、あてつけで田中さんと付き合ったけど、その後詩織に口きいてもらえなくなって、やっぱり俺の片想いだったんだって実感した……」
「……」
「だったら、せめて友達としてそばにいられるよう努力した。重い男と思われて嫌われるよりマシ。好きでいたいって気持ちもあったけど、半分は諦めてた……。田中さんに触れたら詩織を忘れられるんじゃないかって気がしたけど、やっぱり無理だった……」
高校時代のウワサは本当だった。並河君は田中さんと……。
「田中さんだけじゃない。……詩織に会わなかった時間、誰といても、相手の姿に詩織を重ねてた。朝も、夜も」
「……うん」
並河君が他の女性と……。考えただけでつらいし、想像もしたくない。でも、そういうことをしたくなった気持ちは痛いほど分かる。
……私もそうだった。
並河君に振られたと思い込んだあの頃、大学生活でその痛みを忘れようとした。幸か不幸か、新しい出会いには恵まれた。
初めて体を重ねた相手のことは、ほとんど覚えていない。
彼はひとつ年上の人だけど留年したとかで私と同じ1年生だった。同じ大学でゼミも同じ。課題や資料のことでよく話した。覚えていることと言えば、そういう、彼の関係者なら誰もが知っていそうなことだけ。
肌を合わせておきながら、その相手の内面や言葉にはまるで興味が湧かなかったのだから、やっぱり人として何かが欠けているとしか言いようがない。自分で自分がこわいと思った。