セカンドパートナー
とっくの昔に気付いていた。
優人は、私といても、実家では自分らしくいたいのだ。仕事中のように色んなことに気を回して疲れたくないのだ。自分の親が私に言っていることなど、優人にとっては昔からよくある日常のひとコマでしかないのだ。だから聞き流すのだ。私の気持ちに気付くわけがないのだ。
義親が何年もかけて作ったひとつの家庭。そこへ、価値観の違う私が他所(よそ)から飛び込んでしまっただけ。根本から違う義家族と私。衝突するのは自然なこと。
はじめから、優人のことなど好きではなかったのかもしれない。
優人に告白された時、私は普通の精神状態ではなかった。前の彼氏とひどい別れ方をし、毎日死にたいと願うほどの極限状態だった。自分の価値は低いと感じていた。
好きではない相手とも付き合ってしまえる心の状態だった。
だから義親と合わないのかもしれない。本当に心から好きな旦那の親なら、好きになれるのかもしれないから。義弟に惚れ込み婚約したチハルちゃんが義親とうまくやれているように。
前までは目を背けたかった現実。今はすんなり受け止めることができた。心の奥に並河君がいてくれるから。
それが、私達夫婦の適度な距離感。10年かけて培った関係。
私達は、近づいたり離れたりしながらようやく見つけたのだ。お互いがぶつからない距離というものを。
前だったら、結婚した責任も忘れて離婚を考えた。優人のことをいらないと切り捨てようとした。